日刊OkiMag

沖縄の民話

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 今週から、沖縄の伝説や神話、それに風習などの「沖縄の民話」を連載いたします。民話の中には、先祖から営々と伝えられてきた誇り高いその民族の文化が凝縮されております。その先人たちが残してくれた息吹をすこしでも感じていただければうれしいかぎりです。  

【連載するにあたって】
 この「沖縄の民話」を連載するにあたり、掲載に対してご協力していただき ました沖縄国際大学文学部 遠藤庄治教授に感謝の意を表す次第です。

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 さて、昔のオジー、オバーたちは、転んだり、怪我したり、事故などにあっ たりすると魂(まぶい)を落としたんじゃないかと心配したものです。 そして、「まぶやー、まぶやー」と言って、手で落ちた物を拾い、落ちた魂 (まぶい)を再び体に込めるような動作をして落とした魂(まぶい)を取り戻すというおまじないがありました。(現在は、あまりみかけませんが。)  もしかしたら、このおまじないのルーツはこの民話ではないでしょうか?

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■取り戻した魂(まぶい)   【宜野湾市】

 昔、仲の良い夫婦がいました。妻は働き者で、いつも夜遅くまで機織りをしていました。夫は夜機織りすると後生(ぐそう(意味:あの世))の人に魂(まぶい)を 取られるという言い伝えを聞いていたので心配していつも妻に言っていました。 「夜に機織りをすると、後生の人から魂を取られると言うだろう。だから、夜 は機織りしないほうがいいよ。もし、どうしても機織りをするのなら、魂を取ら れないように小刀(しーぐ)を口にくわえていなさい。」

 ある雨の降る日、夫は用があって隣村まで出かけました。夜になって自分の村に帰ろうとすると、急に大雨が降って村境の川は水が増えて渡れなくなっていま した。仕方なく夫は、川の水が引くのを待っていると夜中になってようやく川の水が引いたので、川を渡り始めました。その時、むっつり黙って歩く二人の男が 現われ、夫と一緒に川を渡り始めました。

 ところが、この二人の男たちは川を渡 る時、不思議なことに少しも水音を立てずに歩いていました。そればかりか、男 たちの着ている着物は、死んだ人が着る後生衣装(ぐそうすがい)そっくりで、よく見ると歩いている二人の近くには幾つかの青い小さな火がチロチロと燃えてい ました。「これは、人間ではないな。何者だろう。」 夫は、二人の男を見て気味が悪くなったので、急いで川を渡ろうと足を早めました。

 すると、二人の男が音もなくすっと近づいてきて尋ねました。「お、ま、え、 は、み、ず、の、お、と、が、す、る。に、ん、げ、ん、か。」  その声は、地獄の底から響いてくるような不気味な声でした。夫は、これは人間だと答えれば、殺されるかもしれないと思ったので、「私は、みーぐそう(死 んだばかりのもの)だよ。」と答えました。

 すると、その男は、「頭(ちぶる)に さ、わ、ら、せ、ろ。」と言うので、夫は、蒲葵笠(くばがさ)を被った頭をつき だしました。男の一人が蒲葵笠をなでまわした。「頭(ちぶる)は、後生(ぐそう) の、も、の、だ。足(ひさ)も、み、せ、ろ。」 夫は男たちの方に杖を突き出した。後生から来た男達は、その杖をなでました。「足(ひさ)も、後生の、足だ」

 二人の男は、夫を新後生(みーぐそう)だと思って、人の魂をどうやって取るか歩きながら相談を始めました。夫が聞いていると、魂を取られるのは自分の妻で した。夫はなんとか妻を助けてやりたいので、二人の男に頼んでみました。  「どうかあなたがたのお手伝いをさせてください。」 後生の男達はうなずいたので、夫はその後をついて行きました。

 その男達は、夫の家に着くと、すぐに一人は家の上から、一人は家の下から家 にはいりこみ、金欄の袋に妻の魂(まぶい)を入れて出てきました。夫は後生の男 達に言いました。「隣の家にもっと美人がいますから魂を取ってきてください。 この魂は私があずかりましょう。」 二人の男は、取ってきた魂(まぶい)を夫にあずけて、隣の家に入っていきました。

 夫は、物置に駆け込むと、もう一つ蒲葵 笠を取り出し、屋根の上に登りました。やがて、二人の男が隣の家から怒って出てきました。「こ、の、い、え、に、は、お、ん、な、が、い、な、い。う、そ を、つ、か、れ、た。」 屋根上に登って待っていた夫は、蒲葵笠をバタバタさ せ鶏の羽ばたきのまねをしながら、「ケッケレーケッ、ケッケレーケッ。」と鳴 きまねをしました。それを聞いた後生の男達は、「よ、る、が、あ、け、た、 ぞ。」とあわてて逃げていきました。

 夫は、急いで家に入り、息が絶えている妻の鼻に寄せて魂(まぶい)の入った袋の口を開くと、扇であおいで、鼻の穴から妻の魂を入れてやりました。すると、 それまで死んでいた妻は、すぐに生き返りました。この夫婦は、その後も長生き して幸せに暮らしました。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★≪ お願いはじまり ≫★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
当民話は、沖縄国際大学文学部 遠藤庄治教授のご厚意により掲載させて頂いてお
ります。その転載・複写、一部引用等の二次利用は、教育目的、学術的な研究目的、
啓蒙的な意義のある活動(営利を目的としないもの) において自由に可能です。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★≪ お願いおわり ≫★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

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Copyright (C) 1998 沖縄まが人


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