日刊OkiMag

沖縄の民話

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/<< 【連載】沖縄の民話 >>_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 2月3月は、沖縄近海を鯨(くじら)が回遊しており、慶良間諸島ではホエールウォッチングツアーなど鯨に関するイベントが開催されています。 今回は、この鯨の由来についてのお話。

---------------------☆--------------------

■鯨(くじら)の由来   【波照間島】

  沖縄の島々では、年に二回稲が実ります。秋になるとどの島でも盛大に種取り祭りをして、田に種を降ろす(植え付ける)用意をします。 日本最南端の波照間(はてるま)島でも、タタシ星が見える秋になると、 その頃降る雨で田が水で一杯になり、その大雨をみはからって、島の人達は田に牛を連れて行き、一日中、田を牛に踏ませてやり、田の底の土まで柔らかくしてから、籾種(もみだね)を降ろしていました。

  牛に丁寧に踏ませた田ほど田の水もちが良く、雨が少なくても田の水が枯れるようなことがなかったからです。 その年もちょうど折り良く、大雨が降ったので、田に水を一杯張り、どの家も忙しく田を牛に踏ませて、籾種を降ろし始めました。

  ところが、その波照間島にどうにもならないほど不精な男がいました。 「あんなに馬鹿みたいに、一日中牛を追っておられるもんか。」そう思った男は、一頭の牛でゆっくり時間をかけて、丁寧に牛に田を踏ませ、籾種を降ろせるように田をならすことが面倒だったので、牛をたくさん飼っていたのをいいことに、八頭の牛を引いて、自分の家の田がある下田原にやってきました。男は、手綱で牛の首を繋ぎ、横一列に並べると、左端の牛は田の真ん中に、右端の牛は田の端に立たせました。

  「さあ、これでよし。ホーイ、ホーイ。」と男が牛を追うと、牛は思ったように、横に並んで田を踏み出しました。「頭は生きているうちに使わないと、損するからな。」怠け者の男は、もう得意になって牛を追いたて田を踏  ませました。男は、あまりいい気になっていたので、その時、海の沖の方から大津波が押し寄せてくるのに気づきませんでした。 人々が押し寄せる津波を見て、あわてて小高いブリブチ丘に登るのさえも  この男は知りませんでした。

  男が津波に気がついた時には、もう目の前に大波が白い波頭を見せて、近づいていました。牛を救おうにも、しっかり繋いだ八頭の牛の手綱を解くこともできませんでした。うろたえている男と牛は、津波に呑まれて、はるか  彼方の沖までさらわれてしまいました。不精な男は、そのまま死んでしまいましたが、牛は死にませんでした。昔の波照間島の人達が「牛は蹄(ひずめ)に海苔(のり)が生えるまで泳ぐ。」と言うように、この牛たちは、一頭も溺れずに島影を求めて、泳ぎつづけました。

  いくら牛が泳いでも、果てしない海の真っ只中にある波照間島から流れ出された牛は、いったん失われた島影を見つけることができませんでした。 それでもあきらめずに泳いでいる間に、とうとう牛は、鯨(くじら)になって海で生きるようになったということです。

  毎年、秋になって籾種を田に降ろす頃になると、波照間島の沖合いには潮を高く吹き上げる鯨がやってきて、モーウ、モーウと牛のような声で鳴くのを聞けます。これは、もともと牛だった鯨が生まれ故郷の波照間島を恋しがってやってくるということです。

  沖縄本島に近い慶良間(けらま)諸島の渡嘉敷島でも似たような話が伝わっています。昔、怠け者の牛は、「陸にいると、人間に使われてたまらん。」  と人間にこき使われるのを嫌がって海に逃げて鯨(くじら)になりました。 ところが、海でもまた龍宮でこき使われたので、龍宮を逃げ出して、渡嘉敷島の近くに帰り、牛のような鳴き声をあげて、泳ぐようになりました。

  龍宮の神様は、鯨が龍宮から逃げ出すと大変怒って、歯の鋭いシャチに、「鯨は働かずに逃げていったから、追いかけて見つけ次第殺してしまえ。」  と命令しました。それで、シャチは鯨を見つけると殺すようになりました。 秋になると、慶良間海峡に鯨がやってくるのは、鯨達が故郷に帰ってくる  ためで、また鯨が牛と同じような声で鳴くのも、もともと鯨は牛だったからと言うことです。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★≪ お願いはじまり ≫★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
当民話は、沖縄国際大学文学部 遠藤庄治教授のご厚意により掲載させて頂いてお
ります。その転載・複写、一部引用等の二次利用は、教育目的、学術的な研究目的、
啓蒙的な意義のある活動(営利を目的としないもの) において自由に可能です。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★≪ お願いおわり ≫★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

沖縄の民話を許可なく無断転載することを禁じます。
Copyright (C) 1999 沖縄まが人


≪戻る