日刊OkiMag

沖縄の民話

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 今回は、渡嘉敷ペークーという人物についてのお話。

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■渡嘉敷ペークー     【那覇市首里】

  沖縄がまだ、琉球と呼ばれていた王府時代に機知にとんだ型破りの奇人がいました。1742年に首里の赤田で渡嘉敷親雲上(とかしちぺーちん)である兼倫(けんりん)の三男として生まれた渡嘉敷ペークーと呼ばれる人物です。

  親雲上(ぺーちん)とは、地頭職や脇地頭職に相当する士族の位階です。ペークーの父親は、御右筆主取(うゆうひつぬしどり:文書係)と謡取調役うたいとりしらべやく)でした。

  ペークーは、27歳から7年もの間、薩摩(鹿児島)で和文、和歌、剣道、書道、茶道、生花などの修行をし、帰朝して花当職(はなあたいしょく:花畑管理職)を経て、尚敬王の世子、尚哲公の右筆(ゆうひつ)となりました。 しかし、ペークーはこうした役職にありながら、どうした訳か自分で貧乏を売り物にして、人々を笑わせていました。

  ある日、ペークーは城内で前かがみになってとぼとぼと歩いていました。 王様は、さも哀れそうに歩いているペークーを呼びとめ、訳を聞くと、いかにも情けなさそうな声で言いました。 「はい、とぅじ(妻)から明日の米代がないと言われまして・・・。」 王様は、「ははぁ、またいつもの手だな。」と思ったものの、しょげかえっているペークーの姿がおかしくてたまらず、米を一俵持たせてやることにしました。

  するとペークーは、わざと一番小さく弱々しい馬を連れてきて、鞍(くら)の片方に米俵を積みました。小さな馬は、王様の前で、よろめいたかと思うとたちまちひっくり返ってしまいました。

  王様が見かねて尋ねました。「ペークー、お前の馬は、なんとよく転ぶ馬だな。」「はい、御主加那志(うすがなしー:王様)。片側だけでが重くては、私の馬は前にも後ろにも進むことができません。このままでは、引っ繰り返るばかりです。」 王様は、苦笑いしながら、もう一俵をペークーに持たせてやりました。

  ところで、王様は囲碁が好きで、気の置けないペークーと碁を打つのが楽しみでした。相手が王様でも、碁を打つペークーの態度ときたら、一つ碁石を置くたびに手を打ったり、足を上げたり、ヒヤヤー、アァヤーと奇声を発したりしていました。そればかりか、ペークーが勝つと王様を四つん這いにして馬乗りになったり、ひどい時には王様に柱を抱いて蝉の真似までさせるという有り様でした。

  これに気づいた上役達が心配して、ペークーを叱りました。 「お前の態度は何だ。御主加那志にヒヤヤーと無礼な奇声を出しながら碁を打つとは、けしからん。」

  翌日もペークーは、王様と碁を打つことになりました。 するとペークーは、碁石を一つ置いてするするっとはるか後ろに下がり、頭を畳にすりつけんばかりにかしこまって平伏し、「御主加那志、どうぞ。」と言い、王様が打つと、頭を下げたまま碁盤におそるおそる近づいて、顔も上げずに碁石を一つ置き、またいかにもかしこまった様子で、はるか下座に飛ぶよう下がって平伏しました。

  そして、王様が何を言っても、「うーさい」とかしこまって返事をするだけでした。これでは、王様は一つもおもしろくありません。 「ははあ、さては上役達に何か言われたな。よいよい、上役には、わしから言ってやるから、ペークーよ、頼むから元のように打ってくれ。」と王様が言ったので、ペークーはまた元のように打つようになりました。

  そのペークーが、朋輩達に言いふらしました。 「どうだ、王様が俺の家に入る時にお辞儀をして入るか賭けをしよう。」 ペークーごときの家に入る時、王様がお辞儀をするはずがないではないか。 誰もがそう思っていました。

  そんな賭けをして、ペークーは、自分の家に王様を招きました。 王様が行ってみると、何とペークーの家の門の低いこと。王様も家来達も仕方なく、低く頭を下げて門を通りました。 家の中でその様子を見ていたペークーは、手を打って笑い、王様と一緒にやってきた朋輩達に言いました。「どうだい。王様は頭を下げただろう。」

  晩年、ペークーは地頭収得を伴わない北谷間切(ちゃたんまぎり)の真栄城  (まえしろ)の名島となり、名を真栄城に改めました。 ペークーは、90歳を越す長寿で他界しましたが、死ぬ時に次の歌を残し  たといいます。

   『もし閻魔(えんま)の御用とあらば、99までは留守だと答えよ』

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