日刊OkiMag

沖縄の民話

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 皆さん、もう正月の初夢を見ましたでしょうか。
 今回は、正月の夢についてのお話です。

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■正月の夢    【八重山石垣市】

 昔、貧乏人と金持ちが隣合わせに住んでいました。正月の元旦の日の夕方、神様が乞食(こじき)の姿でやってくると、金持ちの家の戸口に立って、「どうか今夜宿を貸して下さい。」と頼みました。すると金持ちは、「こんな薄汚い者を正月早々泊めることはできない。とっとっと消え失せろ。」と怒鳴った。

 「そうですか。すみませんでした。」と言って旅人は、すぐ隣の貧乏人の家に行って戸口に立つと、「どうか、一夜の宿を貸して下さい。」と言いました。

 すると貧乏人の爺さん婆さんは、にこにこしながら旅人を土間に通して、「まあ、お寒い中を大変でございましょう。ご覧のとおりの暮らし向きで十分なおもてなしはできません。それでもよろしければ、どうぞごゆっくりなさってください。」と喜んで迎えました。

 そして、貧乏人の家では貧しいながらも旅人と一緒に心のこもった元日の夕食を一緒にとり、三人で囲炉裏の火に当たりながら四方山話(よもやまばなし)をしているうちに次第に夜は更けていきました。

 翌朝早くその旅人はまた旅を続けると言って家を出ました。その時に旅人は貧乏人の夫婦に泊めてもらったお礼を言いました。そして「私は実は普通の人間ではありません。あなたがたのような親切な人間をみつけて助けてやろうとして旅を続けているのです。」と言いました。

 そこにいたのもうみすぼらしい乞食の姿の人間ではなく、白い髭をはやした  神様でした。「今夜、夢の中でこの家に入ろうとすものがある。それを家の中に入れることができれば、あなたがたの暮らし向きは楽になるでしょう。」そう言って神様は二、三歩歩くと、大きなハブになってするすると動き、姿を消してしまいました。

 その晩、爺さんと婆さんは、「今夜、夢の中で一体何がこの家の中に入るのだろうかね。」「どんな不思議なことがあるんだろう。」と言って神様の言葉を気にしながら、早めに寝ることにしましたが、なかなか寝ることができませんでした。

 そのうちに、次第に夜が更けて二人はいつの間にか眠ってしまいました。すると夢の中で大波がドーッと押し寄せてきました。その大波と一緒にいっぱいの荷物を積んだ大きな帆前船(ほまえせん)が家の前までやってきました。

 けれどもその船の帆柱が家の桁(けた)に掛かってしまって、船は家の中に入ってこれないでいました。夢の中で爺さんは、斧を持ち出してきて、力一杯桁を切り落としました。すると、ズズーッと大きな音がして、宝船が家の中に入って来ました。

 その時爺さんと婆さんは目を覚ましました。「よくもあんな大きな船がこんな小さな家に入ってきたなぁ。」  「ええ、お爺さんが頑張ったから船が入ったんですね。」爺さんと婆さんは同じ夢を見ていました。その日から二人は何一つ不足のない豊かな暮らしをしました。

 それから、正月の宝は海からやって来るというので、その家では正月になる海から初塩をとってきて家を清め、正月を迎えるようになったということです。

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