日刊OkiMag

沖縄の民話
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 今回は、沖縄版の浦島太郎についてのお話。

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■浦島太郎    【宮古伊良部町】

  昔、ある島の漁師が、二三日雨が降り続いたため、海へも行けず心配していると、昼頃から次第に天気が良くなって来ました。漁師は早速、魚釣りの道具を用意して海に出かけ、潮が引いたのでハマグリやアワビ、エビなどを捕っていると漁師の足に女の人の使う入髪(いりがん)が引っ掛かって来ました。

  その入髪を獲物が入っている袋に入れて帰ろうとすると、砂の上にうずくまって泣いているとてもきれいな女の人に出会いました。「どうして泣いているのですか?」と、漁師が尋ねると女の人は、「私は大切な入髪を落としたので、それで悲しくて泣いているのです。」と答えました。

  漁師は先程の拾った入髪のことを思い出しました。「それなら、あなたのなくした入髪はこれですか。」「ああ、それは私の入髪です。ありがとうございます。お礼に何でも欲しいものをおっしゃってください。」「いいえ、私には特に欲しいものはありません。そうだ、それなら私のお嫁さんになってください。」と漁師は言いました。

  実はその女の人は龍宮の神様でした。漁師にそう言われて女の人は仕方なく漁師のお嫁さんになりました。夫婦になった夜、漁師が少し眠って目を覚ますと女の人の姿がみえません。二日、三日、そして一年経っても女の人は帰ってきませんでした。

  漁師は夜も昼も海に船を出して探しましたが、それでも見つけることができませんでした。ある日、漁師が海に出て舟を漕いでいるとどこからとなく「お父さん、お父さん」という声が聞こえてきました。

  「自分には妻も子供もいないのに誰がお父さんと呼ぶのだろう。」と舟を止めてあたりを見回すと、三人の女の子が舟の先につかまって、「お父さんお父さん、私達もその舟に乗せてください。」と言いました。

  「どうしてこの私をお父さんと呼ぶのかね。」と漁師が言うと年上の女の子が「龍宮のお母さんがお父さんを連れてくるように言ったからです。」と答えました。

  漁師が喜んでいると女の子は「お父さん、龍宮に行ったら帰る時お母さんがお土産を二つ用意しています。玉手箱を出したら、それはいらないと言って下さい。そうするとお母さんは床にある瓢箪(ひょうたん)と柱に立ててある杖を出すと思います。それをお土産に貰ってください。」と教えてくれました。

  龍宮に案内された漁師は沢山の御馳走を食べ、楽しく遊んでいるうちに二三日が過ぎました。漁師が帰ろうとすると妻は、漁師の着物の袖をひっぱって、「もっとここに居て下さい。」と頼みました。

  しかし、漁師は「一度、家や村の人たちがどうしているか見てまた帰ってきます。」と言うと、妻はお土産の玉手箱を出したので、漁師は「いや、それはいらない。」と言いました。

  「それなら何を貰いたいですか。」「床にある瓢箪と柱の傍らに置かれている杖が欲しい。」と言いました。

  妻は漁師の望み通りに瓢箪と杖をお土産にあげました。漁師が帰る時、子供達が送ってくれ、その途中で子供達がお土産に使い方を教えてくれました。

  「村に帰ったら村はもう無くなっています。この杖を回して欲しいものを言うと何でも願いはかなえられます。また、この瓢箪には水が入っていて、これを飲むと長生きできます。」と言いました。

  島に帰ってみると村の様子はすっかり変わっていました。漁師が黙って立っていると、年寄りがやって来ました。そこで、その村の年寄りにいなくなった漁師のことを聞いてみました。

  その年寄りは、「ああ、あそこにあった家の漁師のことならもう今から二百年も前の話だよ。漁師が舟を出して漁に出かけたまま帰ってこなかってそうだよ。しかし、舟も漁師も見つけることはできなかったから、多分舟と一緒に沈んでしまったのだろう。」と言いました。

  それを聞いて漁師は「そうか、もうあれから二百年も経っているのか。」と驚きましたが、自分の家のあった所へくると杖を回して、「確かにこの辺に自分の家があったはずだ。家が欲しい。家を出してくれ。」と言うと昔の漁師の家が出てきました。

  漁師はそれから家の中で瓢箪の水を飲み仕事もしないで暮らしました。そんな漁師を見て、「水だけ飲んで仕事もしないで生きられるとはやっぱり化け物だ。」と思って誰も漁師の事を相手にしませんでした。

  それで漁師は村にも住みにくくなり、家を出ていこうとしたとき、その途中で倒れて瓢箪を割ってしまい、その後はどこへ行ったか分からなくなってしまったということです。

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