日刊OkiMag

沖縄の民話
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 今回は、マムヤという女性の悲しいお話について。

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■平安名(へんな)のマムヤ    【宮古・城辺町】

  昔、沖縄の島々を按司(あじ)と呼ばれる豪族達が支配していた頃のお話
 です。

  その頃大和からはるばると遠い宮古島まで落ち延び、東平安名崎(ひがし
 へんなざき)に近い保良(ぼら)の村に住む女がいました。
  平家の落人で名前をマムヤといい、大変美しい女で機織りが上手でした。

  このマムヤの輝くような美しさが噂になると、宮古の島々の按司や役人達
 は、ぜひ妻にしたいとマムヤの家を訪れ、争うようにして結婚を申し込みま
 した。マムヤは、どんなに宝を積まれて申し込まれても、「おこころざし、
 まことにありがとうございます。けれども私はこのまま一人でいたいのです」
 とどの按司にもはっきりと断りました。

  それでも按司達がマムヤの家に通ってくるのをやめなかったので、マムヤは
 突然姿を隠してしまいました。

  ある日宮古島の按司でマムヤの住む保良や近くの村々を支配している野底
 按司(のそこあじ)が、東平安名崎の近くの海に行き、家来達に網で魚を取
 らせていました。海に細長く突き出た東平安名崎には、荒々しい大平洋と東
 シナ海の波が激しく打ち寄せ、岬の断崖の上には、白い百合(ゆり)の花が
 咲き乱れていました。

  その岬の下のグスフカーと呼ばれる泉に近い所まで来た時、岬に打ち寄せ
 る波のとどろきに交じって、微かに機を織る音が聞こえてきました。

  野底按司は、「こんな人も住めない岬で、機を織る音がするとは。おい、
 お前達にもあの機の音が聞こえるだろう。すぐに手分けして捜しなさい。」
 と命じました。

  早速家来達は捜してみましたが、機織りの音は、岬の下の方から聞くと
 上から聞こえ、上から聞くと下から聞こえ、見つかりません。ようやく岬の
 崖を少し下りたところの洞窟からその音が聞こえてくるのがわかったので、
 野底按司はその洞窟に入ってみました。

  光がようやく届く洞窟の岩の上に、美しい布を織りかけにした機が置いて
 ありましたが、人の姿はどこにも見当たりませんでした。
  「ここで、機を織っていたのはだれだ。姿を見せなさい。」
 野底按司が言うと、どこからともなく女の声が聞こえてきました。

  「私は人々から姿を隠すためにこの洞窟に隠れました。どんなに偉いお方
 にも姿を見せるわけにはゆきません。」
  「おお、その声はマムヤの声ではないか。」
  「はい。」
  「こんなところに隠れても、わしが人に話せば、すぐにあちこちの按司達
 が押し掛けてくるだろう。いっそ、わしの妻になってくれんか。すぐに承知
 できんのならわしと勝負をしよう。わしは、これから狩俣村(かりまたむら)
 まで海の珊瑚の石を石垣に積むことにする。お前も狩俣まで芭蕉(ばしょう)
 の糸をつないで行くのだ。そして、私が勝ったらお前はわしの妻になるのだ」
 しばらくしてかすかに、「はい。」と返事をする声が聞こえました。

  野底按司は、家来に命じて領地の百姓をすべて集めると、海から平たい
 珊瑚の石を運ばせて石垣を積みました。マムヤも芭蕉の糸を細く裂いてつな
 いでいきました。

  昼も夜も宮古島の東南の端の東平安名崎から20キロ以上も離れた北西の端
 の西平安名崎(いりへんなざき)にある狩俣村まで、野底按司は百姓と家来
 に石垣を積ませ、マムヤは芭蕉の糸をつないでいきました。

  野底按司は、とうとう狩俣まで石垣を積んだが、マムヤのつないだ芭蕉の
 糸は、わずかに狩俣の村まで届きませんでした。勝負に負けたマムヤは約束
 通り野底按司の妻となって暮らすことになりました。

  ところが、野底按司には、二人の子供を産んだ妻がおり、その妻がことご
 とにマムヤにつらくあたりました。朝夕の妻の意地悪に我慢ができなくなっ
 たマムヤが按司に尋ねました。
  「どうか教えて下さい。私は勝負に負け、妻にするというからあなたの家
 に来ました。けれども、あなたには奥様がいらっしゃいます。なぜ、私を妻
 にすると言って連れてきたのですか。私と奥様とどちらが大事なのですか。」
  「どちらが大事かと言われれば、まあ、そうだな、子供のいる妻の方が
 大事だ。」

  マムヤは、これを聞くと一人で野底按司の家を出て平安名崎に行きました。
  「神様、私がこんなに辛い苦しい思いをしたのは私が美しかったからです。
 どうか、この保良の村の娘にこんな悲しい思いをさせないでください。
 この保良に美しい娘が生まれないようにしてください。」
 そう祈ると崖から身をおどらせて、身を投げて死んでしまいました。

  それから、平安名崎に近い保良の村には、長い間美しい娘は生まれなくな
 ったということです。平安名崎の白い灯台の近くに、今もマムヤのこもった
 洞窟とマムヤの墓があります。

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Copyright (C) 1999 沖縄まが人


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