日刊OkiMag

沖縄の民話
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 今回は、久高島の兄弟のお話について。

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■山ドゥクーと海ジ    【知念村】

  昔、久高島に仲の良い兄弟がいました。

  ある日、いつもは喜んで海に行く弟が、海で何かあったのか、なかなかし
 ぶって海に行きたがりませんでした。兄が心配して、「今日はどうして海に
 行かないんだ。」と聞いても、「ただ行きたくないだけだよ。」と言うので
 兄は、「じゃあねえ、お前が海に行きたくないなら、今日は私が海に行くか
 らお前は山に行ったらどうかな。」と言いました。

  実は兄も本当は山で何かを見てきて、山に行きたくなかったのです。だけ
 ど、弟にそのことを言ってもいいかどうか分からなかったので、そう言って
 弟と交代したかったのです。そういうことで、兄は海に、弟は山に行くこと
 になりました。

  海へ行った兄は、海で大変不思議なものを見ました。沖縄の言葉でジュゴ
 ンのことをザンと言いますが、そのザンが子供を生むところを見ました。

  するとザンが、「お前は、人が見てはいけないものを見たんだ。このこと
 は誰にも一言でもしゃべったらいけないよ。これをしゃべらなければお前は
 生涯お前の思う通りにいくけど、他人にしゃべったらお前は不幸になるよ。」
 兄はそう言われたので、家に帰っても弟には言わないことにしました。

  弟のほうは山に狩に行って、山鳩など取ったりしていましたが、馬に羽が
 生えた不思議な天馬を見て、驚きました。すると天馬が、「お前は人間が絶対
 に見てはいけないものを見てしまった。しかし、この島でこのことを他人に言
 わなければ、何も不足もない思い通りの暮らしができるよ。だから私を見たこ
 とを絶対に他人に話したらいけないよ。」と言いました。

  兄は、昨日は山で天馬を見ているから山には行きたくなかったので、「今日
 は、ひょっとしたら弟が見てびっくりしていないかな。」と心配して家に帰っ
 てきましたが、弟はまだ帰ってきていませんでした。

  弟は弟で驚いて、怖いものだから「また明日、兄さんに何で行かないかと
 言われても、兄さんにも誰にも言えないなぁ。どうしようか。」と思って弟は
 もう家に帰るのも怖くなって、山の洞窟に入ると、「助けて下さい。どうか助
 けてください。」と神様に願って家に帰らないでいました。

  お兄さんは弟思いであったので、すぐに方々を捜して、やっと山の洞窟の
 中で、こくりこくりと居眠りをしている弟を見つけました。お兄さんが声を
 かけると、弟がワーッと泣き出しました。「私はお前が何で家に帰らないの
 か分かるよ。お兄さんが悪かった。お前に言えばよかったが、言えないこと
 があったんだよ。」と言って弟に詫びました。

  兄も弟も、ザンと天馬から見たことを他人に言ったらいけないよと言われて
 いるので、兄弟でも話せず、二人抱き合って泣いているとそこに神様が現れて
 言いました。「この世に、こんなに口が固い兄弟がいたとは。さあ、私が許す
 から、昨日の話と今日の話しをお互いにしなさい。」

  神様から許しがでて、お互いに話してみたら、二人とも海と山で交代してい
 るから、兄も弟も同じ不思議なものを見ていることが分かりました。神様は、
 「じゃあ、兄のお前には山の徳をあげよう。また、弟のお前には海で沢山の魚
 が捕れるように、海のまじないの海のジーを教えてやるから、仲良くこの島を
 守れよ。」と兄には山の幸の徳を、弟には海の呪文の海のジーを教えてやりま
 した。

  それから、兄は山ドゥクー、弟は海ジと呼ばれて二人仲良く島を守ったと
 いうことです。

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当民話は、沖縄国際大学文学部 遠藤庄治教授のご厚意により掲載させて頂いてお
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Copyright (C) 1999 沖縄まが人


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