日刊OkiMag

沖縄の民話
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 今回は、どうして猿のお尻は赤いのかについてのお話しです。

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■猿長者    【名護市】

  昔ある所に大金持ちのお爺さんとお婆さん、そして貧乏なお爺さんとお婆
 さんがおりました。
  ある年の夜、貧乏人のお婆さんが、「お爺よ、正月だというのに米が一合
 もない。どうしましょう。」と言うと、お爺さんは「仕方がない。隣の金持
 ちの家に行って借りてこよう。」
 そう言ってお爺さんは隣の家に出かけました。

 「御免下さい。すみませんがお正月の米一合貸してくれませんか。」
  すると金持ちのお爺さんが出て来て、「あんたたちのような貧乏人に貸す
 米はない。」と言って断られました。

  家で待っていたお婆さんはお爺さんが帰るなり「どうでしたか。お爺さん」
 と聞くとお爺さんは横に首を振って、「私達貧乏人に貸す米は一合もないそ
 うだ。借りても返す力がないから、貸さないと言われたよ。」と言いました。

 「それでは仕方がない。火を焚いて火正月でもしましょう。」
  お爺さん、お婆さんは囲炉裏で火にあたっていました。
  その頃、隣の金持ちの家にフクター(ぼろの着物)を着た旅人が来て、
 「この家は立派な家だから私を泊めてくれるだろう。チャービラサイ(御免
 下さい)。旅の者ですが、一晩泊めてくれませんか。」と頼みました。

  すると金持ちのお爺さんは、「ならん、ならん(駄目だ、駄目だ)大晦日
 の晩にあんたのような人を泊めるわけにはいかん。さっさと帰りなさい。」
 と言いました。
  「お願いです。私はどこへも行く所がありません。どうか今夜一晩で結構
 です。泊めて下さい。お願いします。」と何回も何回も頼みました。
 「駄目と言ったら駄目だ。」

  金持ちの家で断られたので旅人は今度は隣の貧乏人のお爺さん、お婆さん
 の家に行き戸を叩いて言いました。
 「チャービラサイ(御免下さい)。私は旅の者ですが日も暮れてしまい、行
 く所がありません。どうか一晩泊めてくれませんか。」と頼みました。

 「ごらんのようにこんなあばら家ですが、それでもよろしかったら、どうぞ
 泊まって行ってください。遠い所からおいでなら、さぞお疲れでしょう。
 私の家は何もありませんが、どうぞお入りください。」と言って一晩泊めて
 あげました。

 「どこの家でも正月には御馳走があるのに、ここはどうしたのですか。
 火だけ焚いて正月をするとは何か訳があるのですか。」
 「実は私達は大変貧乏で、明日食べるお米もないんですよ。お隣に行ったら
 断られてしまいました。」

 「そうですか。それでは鍋はありますか。」
 「はい、鍋はあります。」
 「それなら、その鍋に水を入れてお湯を沸かしてごらんなさい。」
  旅人の言うとおりにお婆さんは鍋に水を入れて湯を沸かしました。
  すると旅人は、袋を取り出しその中から何か少し鍋に入れました。
  すると鍋の中はたちまち温かいご飯でいっぱいになりました。

 「温かいご飯だけでは食べられない。もう一つ鍋を出して下さい。」
  今度も鍋にお湯を沸かすとまた袋の中から何かを取り出し、ちょっと鍋に
 いれました。
  すると、豚肉やその他沢山の御馳走が出て来ました。

 「さあ、どうぞ召し上がれ。これでお正月を過ごして下さい。」と言ったの
 でお爺さんとお婆さんはびっくり仰天しました。
 「おもしろい人だ。不思議な人だ。この人はきっと神様かもしれない。」
  お爺さんとお婆さんは小さい声で話しながら御馳走を食べました。

  次の日の朝、旅人は「夕べはありがとうございました。泊めていただいた
 お陰で大変助かりました。お礼に何でも欲しい物をあげます。何がいいです
 か。」と言いました。
  お爺さんとお婆さんは「私達は何も欲しい物はありません。ただ元気だっ
 た若い頃に戻りたいと思います。」と言うと旅人は昨晩と同じように鍋に湯
 を沸かしてもらい袋の中から何かちょっと入れ、「この湯で浴びてごらん。」
 と言いました。

  お爺さんとお婆さんが言われたとおりに浴びると二人は二十代の若い夫婦
 になりました。
 「さあ、あなたたちは隣へお正月の挨拶に行ってきなさい。私はこれで失礼
 しますよ。」そう言うと旅人はどこかへ行ってしまいました。

  若返った二人が隣へ行って、「いい正月でーびる(いい正月です)。」
 と言うと金持ちの夫婦は、「あなたたちはどこの人ですか。」と聞きました。
 「いやあ、私達は隣の貧乏者の夫婦ですよ。」
 「どうしてそんなに若くなったんだね。」
  びっくりして金持ちの夫婦は聞きました。

  若返った夫婦が理由を話すと、「その旅人はどこへ行ったか。」
 「帰られましたが、馬で追い掛けたら、追い付くかも知れません。」と若返
 った夫婦が言うと金持ちは、早速馬を出して旅人に追いつきました。

 「私達も若くなりたいので、どうか家に来てください。」と頼みました。
  旅人は金持ちの家に引き返し、鍋に湯を沸かさせ、その中に袋から何か取
 り出して入れて、「さあ、これを浴びなさい。」と言って、旅人はさっさと
 帰ってしまいました。
  早速、金持ちのお爺さんとお婆さんがはその湯を浴びました。
  すると二人は雌猿と雄猿になって山へキャッキャッと逃げて行きました。

  ある日、また旅人がやって来て若返った夫婦に言いました。
 「金持ちの夫婦は猿になったので、あなたたちがあの家に住みなさい。」
  若返った夫婦は旅人に言われたように隣の金持ちの家に住みました。

  すると毎日山から猿がおりて来て、「ワーヤーケーシ、ワーヤーケーシ
 (私の家を返して)」と言いに来ました。
  するとまた旅人が現れて、「新しい家の住み心地はどうですか。」と聞か
 れました。
  そこで猿に困っていた夫婦は、「それが毎日決まったころに猿が山からお
 りて来て、そこの石に座り、ワーヤーケーシと言ってうるさいんですよ。」
 と話しました。

 「それでは明日猿の来る前にその石を強く焼いておきなさい。」と旅人は
 言いました。
  若い夫婦がそのとおりにすると、いつものように猿がやって来てその石に
 座りました。
  石はよく焼けていたので猿のお尻は火傷をしてしまい、キャッキャッとい
 って山へ逃げて行きました。
  それから後、猿はもう2度と金持ちの家に来なくなりました。

  猿のお尻が赤いのは、この時火傷をしたからだと言うことです。

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当民話は、沖縄国際大学文学部 遠藤庄治教授のご厚意により掲載させて頂いてお
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