日刊OkiMag

沖縄の民話
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 今回は、ムティアガラという男の出世物語についてのお話しです。

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◆ムティアガラ  【宮古伊良部町】

  昔、ムティアガラという貧しい男が海辺の岩屋で一人暮らしをし、近くの
 荒れ地を開墾して沢山の粟を実らせていました。

  ある日、村の御主(うしゅ)の三人の娘が遊びに出たとき、ムティアガラ
 の畑にやって来ると、上の二人の娘は「あの貧乏人のムティアガラがこんな
 上等に粟を育てているさ。」と言って、わざと粟畑の真中を踏み荒らして通
 って言いました。

  それを見た末の娘は、「アッカイー(なんてことよ。)貧乏者のムティア
 ガラが苦労して粟をこんなによく育てているのに踏んで通るなんて。」と言
 って、粟を踏まないように畑の端を歩きました。
  二人の姉は、家へ帰るなり、末娘のことをお父さんに告げ口して言いまし
 た。

 「末の妹は、ムティアガラを夫にしてるのよ。こんなのを家には置けないか
 ら早く追い出してください。」 
  お父さんの御主は、それを聞いて、末娘を呼ぶと、「ムティアガラのよう
 な貧乏人と一緒になっている者を家におけない。とっとと出でゆけ。」と
 言いました。

  末娘は、泣きながら家を出てムティアガラの家に行くと、家から追い出さ
 れた訳を話しました。 
  ムティアガラは驚いて、「偉い御主の娘の貴方と僕のような者とは一緒に
 なれないよ。」と言いました。

  末娘は涙声で、「私には、もう帰る家がありませんので貴方と一緒にここ
 に住まわせてください。」と頼みました。

  そう言われてもムティアガラは困ってしまって、「あなたのような人が、
 僕のような者と一緒にいられるのでしょうか、筵(むしろ)も鍋(なべ)も
 なんにもないこのような家に、貴方は住めないでしょう。」と断ると、末娘
 は「私にはできます。急いで筵も鍋も探してきますから、大丈夫です。」と
 言うので二人は一緒になりました。

  ある日、その妻が薪を拾いに洞穴から浜へ出てみると、何か黒く光るもの
 が沢山落ちていました。
  よく見るとそれはお金だったので、それを家に持って帰りました。
 「あの浜にこんなに沢山お金が落ちていましたよ。これで、筵も鍋も買いに
 行けますね。」と喜んで言うと、ムティアガラが「こんな物なら沢山持って
 いるよ。だから、これを投げて飛んでいる鳥を落したりしていたんだ。」と
 言いました。

  妻は、早速そのお金で筵や鍋を買ってきました。
  二人は幸せに暮らしていました。
  ところがお父さんの御主は「あのような者といつまでも一緒にさせておく
 わけにはいかない。奴が家の婿では、私の面目が立たない。あの男は首里
 (沖縄本島)に連れて行って苦しませ、死んでもらおう。」と考えました。

  御主は、ムティアガラに言いました。
 「沖縄(うちなー)に連れて行く、すぐに準備をしなさい。」
  その頃はムティアガラのように身分が低い者は、御主に逆らうことは出来
 ませんでした。

  ムティアガラが沖縄に連れて行かれることを心配した妻は、小さな袋を
 ムティアガラの首に掛けてやって「お父さんは貴方を沖縄に連れて行き、
 うんと苦しめた後に殺してしまうと言っています。木の斧で薪割りをさせる
 はずだからその時は、この袋の中の龍糞(りゅうふん)を少し取って斧の刃
 にまぶしてください。また、どんなに薪割りをさせられても、その龍糞を少
 しずつなめていると元気がでてきます。」と言いました。

  長い船の旅をして、沖縄の御主(王様)のところに連れてこられると、
 ムティアガラは着いたその日から七日七晩、一口も食事を与えられずに木の
 薪割りをさせられました。 
  ムティアガラが木の斧に龍糞をまぶすと、木の斧なのに堅く太い木でも、
 面白いように割れました。 
  また、七日七晩食べなくても龍糞を少し嘗(な)めただけで、元気になり、
 休まずに薪割りができました。
 「なんと、沖縄の御主は恐ろしい方だ、だけどこの薪割りもやってみると面
 白い」と踊るようにして薪を割り続けました。

  沖縄の御主は、宮古から来たムティアガラが七日七晩食事なしに、木の斧
 で薪割りをしていると聞いたので「そんなに元気でやれる者は、他の人と違
 うのですぐに呼んでこい。」と家来に連れてこさせました。

  御主は、ムティアガラを見て「お前は何も食べないでも、元気に薪割りを
 続けている、どうしてそんな事が出来るのか不思議だ。おや、お前の首に掛
 けている物を見せてくれないか?」と言いました。
  ムティアガラは龍糞の入った袋を御主に渡し「それは、妻が持たせてくれ
 ました。それを木の斧にも付け、それを嘗めて私は貴方の言う通りに仕事を
 してきました。」

  袋の中の物を見た沖縄の御主は「ああ、こんな大事な物を持っている者を
 企んで殺そうと連れてこさせたな。こんな宝を持っている者は、只者では
 きっとない、殺すことは出来ない。お前には義父よりも、位の高い宮古と
 八重山の御主の役を与えて故郷に返すから、そのつもりで帰宅の準備をしな
 さい。故郷の宮古に帰るお前に、ムティアガラの船だとわかる飾りつけと宝
 物を沢山積んだ船をあげよう」と言い、それから彼を連れて来た義父の宮古
 の御主に「この者は、只者ではない、宮古へ帰るときは位が高い彼の船が先
 になり、お前の船は後になりなさい。」と言いました。

  ムティアガラが沖縄に来るときは、ぼろの着物を着て、縄の帯を締めてい
 ました。
  それが、宮古に帰るときは、義父より位の高い御主宮古と八重山の御主に
 なり、絹の着物を着て、沢山の宝物を積んだ自分の船で胸を張って帰ってき
 ました。

  宮古の張水の港は、沖縄から帰ってくる船を待つ人でごったがえしていま
 した。
  ムティアガラの妻は、「もう夫は、殺されて帰ってこない。」と思ってい
 ると先頭の一番大きい船が入ってきました。
 「おーい、ムティアガラの船が入ったぞ」と言うので、その旗が上がってい
 る船に近寄って見ると船の甲板にきりっと立っている人の姿を見つけました。
  それは、御主になったムティアガラでした。
  それからは、ムティアガラを憎んでいた義父も彼を「あの男は一番だ!」
 と自慢するようになりました。
  御主になったムティアガラは妻と一緒に一生を幸せに暮らしたということ
 です。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★≪ お願いはじまり ≫★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
当民話は、沖縄国際大学文学部 遠藤庄治教授のご厚意により掲載させて頂いてお
ります。その転載・複写、一部引用等の二次利用は、教育目的、学術的な研究目的、
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