日刊OkiMag

沖縄の民話
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 今回は、ある塩売りの出世についてのお話しです。

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◆塩売りの出世  【名護市】
 
  昔、泡瀬(あわせ)に、マースウヤー(塩売り)の男がおりました。
 ある日、マースウヤーが、中城間切渡口村(なかぐすくまぎりとぐちむら)に
 入ったら急に大雨になりました。
 「塩を濡らすと商売ができなくなってしまう。」と思って駆け込んだところ
 は、大金持ちの倉でした。雨は止みそうもありません。

  目が慣れてきて倉の中を見ると、そこには弓と矢がありました。
 「この弓なら猪でもしとめられるな。」と思って弓に矢をつがえてチョッと
 引いてみました。すると矢は勢い良く倉の奥へ飛んで行ってしまいました。

  すると「ギャーッ。」と大声がして、人が倒れる音がしました。
  見ると矢が刺さって男が死んでいるではありませんか。
  その悲鳴を聞きつけて、その家の人達がすぐに倉に集まって来ました。

  その家の主人は、死んだ男を見て「誰がこの泥棒を倒した?」と皆に聞き
 ました。しかし、奉公人達は首を横に振るだけです。
  物陰で小さくなっていたマースウヤーは、やがては分かってしまうことだ
 からと思って、主人の前に出て言いました。

 「ご主人様、倉の中に人がいるとは知らないで、この弓と矢をいじっていまし
 たら、矢が飛んでいってしまったのです。」
 「いやいや、この男は今、世間を騒がしている大泥棒だったのです。貴方の
 おかげで助かったよ、もう少しでこの倉の米はごっそりと盗まれてしまう
 ところでしたよ。貴方に褒美をあげなくてはね。」と逆に感謝されました。

  そう褒められてマースウヤーはもじもじしてると、「相談なんだが、貴方
 の持っている塩を全部買うから、私の家で働く気はないか」とその主人が言
 うと、マースウヤーは、「そうですか。塩をみんな買ってくださるのでした
 らここで働いてもいいです。」と答えました。

  この主人には二人の娘がいました。
 「この男が本当に良い人だったら、下の娘の婿にしょう。しばらくこの男の
 働きぶりを見てみよう。」と考えました。
  二日ほど男の仕事の様子を見た主人は「私の目に狂いはなかった。この男
 は娘の婿にふさわしい、しっかりした働き者だ。」と思ったが、主人は念の
 為、男を試すことにしました。

 「貴方を娘の婿にしたいと思っているが、それを決める前に貴方を試してみ
 たい。裏の竹薮にある竹の数を当ててもらいたい。」と言いました。
  男が家の裏へ回ると竹薮が良く見えました。 
  しかし、あまりに沢山の竹なので、とても数えることが出来きません。
  すると、そこへ飛んできた藪蚊(やぶか)が耳の傍で「竹千本、竹千本。」
 と鳴くではありませんか。

  男は「ご主人様、竹はちょうど千本あります」と答えました。
  それを聞いた主人は、「竹薮を見ただけで竹の本数を当てるとは、凄い男
 だ。下の娘の婿になって私の右腕になってくれないか。」と言いました。

  その男は、下の娘が好きになっていたので喜んでその申し出を受けました。
  二人の結婚をみんなが喜んだが、主人の上の娘だけは、妹夫婦が仲がいい
 のを嫉妬して、妹婿を恨んでいました。

  その時、突然村に大変な騒ぎが起きました。
  明日近くの浜に大蛇が現れ、その大蛇に生贄を捧げないと、村中を荒らし
 回り、ずっと雨を降らさなくするという騒ぎでした。

  村中の者が、急いで広場に集められ、村の長老達が中心になって知恵を出
 しあいましたが、どうしたら良いか考えはまとまりません。
  あきらめかけた時、一人の若者が村を救うためにこれしかないと考え、思
 い切って話しました。「誰でも生贄になるのはいやです。でも誰かが勇気を
 出してやらなければ、僕達の村は滅びてしまいます。」と言い、唾を呑み込
 み、つづけざまに「この村を守ってくれるのは、誰もが信頼している、あの
 マースウヤーだった男です。あの人はとても強く、また知恵もあるので大蛇
 が襲ってきても上手くかわし、退治してくれると思います。」と言いました。

  聞いていた村人達はいっせいに大きな拍手をして賛成しました。
  みんなの代表はすぐ金持ちの家の婿に会い、村を救ってくれるようその男
 に頼みました。一緒に聞いていた金持ちの主人も「村が危ないということは、
 よく分かったと思うので、どうだろう、一つ大蛇退治を引き受けてくれない
 か?村を守れるのは、貴方しかいない。みんなの心からの頼みだ。」と言い
 ました。

  婿は、しばらく考えてから「分かりました。がんぱってみます。」と返事
 をしました。
  それを聞くとその主人は、「そうか、やってくれるか。大蛇退治には一番
 優れた馬に乗って行くとよい。」と言いました。

  いよいよ、出発する朝になり、主人が大事にしている毛並みのいい馬に乗っ
 た婿が家を出て行こうと門をくぐると、妻の姉が毒を入れた弁当包みを持っ
 て待っていました。
  毒が入った弁当とは知らない婿は、弁当を受け取って「ありがとう、頑張
 ってくるので、姉さんも待っていてください。」と言い、それを腰に縛り付
 け出発しました。

  馬に跨った婿は浜へ向かい、大蛇が現れるのを待っていると、胴周りが一
 抱えほどもある大蛇が海の沖から浜へ向かってきました。
  大蛇があまりにも大きいので、婿も馬もびっくりして慌てて逃げ出したが、
 大蛇は凄い速さで追いかけてきました。

  その時、馬が怖がって暴れたはずみで、腰に縛り付けた弁当の包みを大蛇
 がぱくりと呑み込みました。
  やがて、弁当の毒がききだすと、大蛇は苦しくなって暴れまわっていまし
 たが、とうとうお腹を上にして、死んでしまいました。

  婿は、大蛇を退治するとすぐ家に戻り、主人に知らせました。
  それを聞いた主人は「うちの婿が、大蛇を退治したぞ!」と村中に響く
 大声を出して喜こびました。
  婿はやがて家のことをまかせれ、ますますその家は栄えて大変な長者にな
 ったというお話です。

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当民話は、沖縄国際大学文学部 遠藤庄治教授のご厚意により掲載させて頂いてお
ります。その転載・複写、一部引用等の二次利用は、教育目的、学術的な研究目的、
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Copyright (C) 1999 沖縄まが人


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